ウイズダムマネジメント

明日を考える経営

- 経営者・幹部へのアドバイス No.26 -

ITで経営課題を解決する

 日本のモノづくりは、高品質と高生産性に特徴づけられます。ただし、経営とマーケティングという広域で見た場合は、米国の企業の方が生産性が高いと言われます。
 マネジメントの発明者であるP.F.ドラッカーは10数年前にハーバード・ビジネス誌の論文で21世紀はホワイト・カラーの生産性の向上を達成した国が発展する予言しました。(明日を考える経営No.23「利益拡大できる業務改善を参照」)

 
 1.基幹業務システム(ERP)
 事実、21世紀のはじまりは、米国の企業はパソコンのハードの分野でも、ソフトウェアの分野でもパソコンのワード、エクセル、メールソフトや基幹業務システムであるERPで圧倒し、経営の業務処理のスピード化で、業績を向上させ、ホワイト・カラー(営業・設計開発・管理部署)の生産性向上に成功しています。
 日本の企業もようやくIT化によって、単なる事務処理システムではなく、顧客データベースの管理によって、顧客満足につながる迅速な回答ができるようになりました。
また、見積のスピード化、製品リードタイムの短縮、製品情報や加工情報の提供などを行って多品種少量受注による新規顧客の獲得、リピートオーダー増大の成果を出す企業も生まれました。
 2.生産メーカーの業務の実情
今や生産向上は5Sで整然として明るい作業場に最新鋭の機械設備も設置されています。しかし、
  • 顧客からの注文に納期が即答できず、女子社員が現場に確認しに行っている
  • 短納期で注文仕様に合わせて製品組立をするために、在庫部品をピックアップしてみないと、部品が揃っているか、どうか確かめられない
  • 注文の部品加工のために素材の有無も在庫現場に当たらないと判らない
  • 女子社員が電話に出ると、顧客から本日出荷予定商品の出荷確認であったが、即答することができなかった
  • 素材や外注部品の在庫状況を確認して発注をかけたいが、在庫棚卸をしないと判らない
  • 欠品を恐れての素材や外注部品の在庫増はキャッシュ・フローを悪くする
 このように、相変わらず人が事務処理や進捗情報を目で追ったり、在庫有無を見に行ったり、担当者に問い合わせるために探し回る。
これでは、業務の生産性はガタ落ちになり、モノ作りの生産性向上の付加価値を減少させることにあります。

 3.Webサイトによる商談システム
 ITは情報技術(Information Technology)と訳されます。
昨今、ICT(情報通信技術)という言葉も生まれていますように、ITと通信技術は一対のものになり、インターネットを活用しない企業はないくらいです。



 東海バネ工業のIT事例
 IT化とWebの活用で、自社のマーケティングでの経営問題を解決された事例は、東海バネ工業(株)の渡辺良樹社長です。

 私は安全弁メーカー時代に高温高圧蒸気用安全弁のコイルバネを同社に発注していました。 手巻の高圧用コイルバネの製作は、同社以外に日本ではありませんでしたし、高品質かつ安心して購入できるバネ製品でした。
 東海バネ工業(株)殿は、皿バネなど、「高品質バネと高難度バネを支える高い技術力と開発力」がありますが、一品料理の多品種少量生産が泣き所でした。
 この経営の弱みを克服して、平均受注ロット5個というフルオーダーメイド生産体制に踏み切り、インターネットのホームページを通して、もちろん社内のIT化によって1個からの製作OKという生産体制を取られました。
このようにフレキシブルな生産体制はITによる業務革新によってもたらされたというべきでしょう。
東海バネ工業(株)の渡辺良樹社長の「1個から製作OK」の英断によって、長い不況期にも全国にお客様は広がり、1桁も2桁もの増客に成功したのです。
経営で何が強いかといえば、直接ユーザーのお客様を確保し、高い信頼性を持っているということほど、強固で安全なことはありません。
増客によって、顧客データベースが出来上がり、「個客」として捉え、信頼関係を1社1社と築くのは、人手による業務処理では対応できないのです。

 この経営革新は渡辺良樹社長のIT化の決断から始まりました。
経営者は先の1〜2年の経営革新計画の中でIT化を経営課題として優先順位を上げておかねばなりません。
IT化は、経営者自身の適確な経営判断の情報を得るために必要です。
また、社内での業務処理(ホワイト・カラー)の生産性が高ければ機を逃さずに販売競争にも意思決定が下せるのです。
IT化の社内体制は、効果的かつスピーディに人材を育成することができるでしょう。 優秀な管理者を経営機能の要所に揃えることができた企業が、経営を安定成長の軌道に乗せることができます。
(2007.3.23 長谷川好宏)
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