ウイズダムマネジメント

明日を考える経営

- 経営者・幹部へのアドバイス No.30 -

経営を支える管理者

 1.経営者の戦略を実現するのは管理者です
 管理者のもう一つの役割は、社員を鼓舞することと社員の育成です。 中小企業経営で柱を立てることは、管理者を任命することに該当します。
管理者は経営者に変わって、
  1. 目標の設定と方向付け
  2. 成果の達成
  3. 社員の育成
という任務を果たしてくれる頼もしい存在です。経営者は企業環境への適応をもっぱら戦略として考え、実行することができるのです。
 経営者は社員の中から信頼に値する社員を選任することに大きな決断を要します。経営者の眼力から見れば社員は頼りなく見えるものです。もう少し様子を見ようということになりやすいのです。
 しかし、一旦、任命された社員は管理職という役割を立派に果たします。そのチャンスを経営者は与えたことになります。

 2.事例:自動機械メーカー
 大阪の機械製造会社の社長は、商社の営業マンから商っていた機械をのれん分けで事業を始めました。任された得意先のニーズを実現するには、「機械を仕入れするだけではダメだ」と自らのアイデアで新たな自動機械を作り上げたい、突き上げるような熱情が生まれて来ました。これが現在の会社を興したきっかけです。今の世の中と違い人情の厚い大阪でした。若い事業家を支援するお客様や知人がいました。のれん分けしてもらったお得意先は今では大企業メーカーですが当時は発展途上でした。難しい自動化の難題に応えているうちに信頼を得られることができ、機械装置メーカーとしての発展ができました。

 3.新任管理者を抜擢
景気の後退などを経て、優秀な社員を無くしたり、工場長も事情があって退職してしまいました。技術陣は3名で手一杯ですし、製造現場は機械加工による部品づくりと、外注部品を含めて機械を組み上げ調整する組立作業からなっていました。しかし、ここ3年、管理者はおらず社長自ら陣頭指揮で現場をやりこなし、顧客への据え付け指揮も自らやっていました。社員も技能では優秀でした。
しかし、その中から管理者として抜擢できる人材の意思決定が出来なかったのです。ある人の助言から現場から2人を管理職に登用したのです。残業代が付かない問題もありましたが、決断は成功しました。

 4.チームワーク力の発揮
 2人の管理者は設計技術の管理者と一緒になって、現場改革に取り組むようになったのです。一社員のときは、朝10分前にかけ込んで来る有様に不満があった2人が、早く来て段取りをし、部下を元気に笑顔で迎えるようになりました。来客が驚くのは見違えるように整理整頓が実現したことです。床も工場内の鉄骨も社員が塗装することによってピカピカに変わり、明るくなったことです。
それだけでなく、管理者によって、次のリーダーが3名育って来ました。この夏、受注した大型機械装置3基の納期が同時になってしまいました。従来ですと納期遅れでクレームの付くところですが、全社員が総出でスケジュールの前倒しをして対応しました。おかげで納入据え付けが完了し顧客から自動機械装置の性能に満足してもらったのです。
 社長は今回、人の扱いで管理者が果たす役割と彼らへの動機付けについて教えられることが多々ありました。8月末の打ち上げ会では、「私はチームワーク力の発揮が会社を変え、人を変えることを見せてもらった。」「管理者の皆さんに感謝をしたい、今後もよろしく」と挨拶しました。

 5.3年後の経営目標設定
 この一年、管理者不在の危機感から社長に働きかけたのは、実は後継者でした。総務・経理を預かる彼も、現場を知らないということで肩書きもありませんでした。黒子になって管理者たちが活動できるように社長を支えたのです。
そして、自分にできることは何か?ということから3年後の経営目標を設定しました。売上高や付加価値額の目標だけではなく、設計技術の人材確保に重点を置きました。
 このビジョン、経営目標に対して、管理者たちは結束し、社長への信頼と自社の未来に自信と期待を寄せました。
今、管理者たちは部下の社員と一体になって、個客に喜んでもらうことを目標にしています。新たな顧客の創造を意識し始めたのです。
(2008.8.23 長谷川好宏)
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